【政府事故調聴取録を読む1-5】事故対応全般|当時の首相・菅直人氏(5)

Investigation

「政府事故調聴取録を読む」の7回目として、菅直人・元首相の5本目を掲載する。1号機の原子炉建屋爆発の経緯や、原子炉への海水注入をめぐる混乱について語っている。

 

聴取対象者:菅直人氏(事故当時の首相)
聴取日:2012年4月3日
聴取内容:事故対応全般について

【ポイント】

  • 1号機の原子炉建屋爆発の経緯
  • 海水注入をめぐる官邸と東電の混乱

【地震発生後の菅首相の初動対応】
14時46分 地震発生、菅首相は参議院から官邸へ戻る
15時37分 第一原発、全交流電源喪失
16時14分 緊急災害対策本部を設置
16時36分 官邸対策室を設置
16時45分 東電、第一原発の全電源喪失を原災法15条に基づき経産相に通報
17時ごろ 菅首相、東電、保安院から第一原発の状況の説明を受ける
17時42分 海江田万里経産相、原災法15条事象を菅首相に報告
時刻不明 菅首相、党首会談に出席
19時03分 原子力緊急事態宣言を発令
22時~23時 最初の電源車が第一原発に到着

3月12日
01時30分 東電などから1号機、2号機のベントの必要性について説明を受ける
01時~02時ごろ 第一原発の現場視察の検討を指示
10時47分 福島第一原発の視察から首相官邸に戻る
15時36分 1号機の原子炉建屋で水素爆発
16時49分 日本テレビが水素爆発の情報を放送
17時45分 経産相、海水注入を指示


菅氏は引き続き、東京電力の幹部たちとのコミュニケーションについて、不満を述べる。

【質問者】
とても大事なところで、総理の意思決定をするに当たって、情報がどれだけあるかというのは非常に重要で、現地に行って吉田さんに会うとわかるんだけれども、武藤さんが言っても、武黒さんが言っても、そういう納得感が得られないという、東電の情報の流れというのが根本的な原因。それを吉田さんならちゃんと判断しているのに、なぜそれが本部である官邸まで伝わってとないのか。ここの問題点はどのようにお感じになられますか。

【菅前総理】
非常に逆説的ですけれども、15日未明に本店に行ってみて、ある意味で何だと。何だというのはいい意味で、全部あるわけですよ。各サイトと24時間つながっているテレビが。そこでしゃべっていることは、全部お互いにいい意味で筒抜けなわけですよ。だから、多分、吉田所長と東電の聞は、少なくとも情報は十分行き来していたはずなんです。私が現場の東電本部に行ってみて。ですから、あそこに我が方から締野とかみんな入って、みんなツーカーですから、隠しょうがないぐらいにツーカーなんですよ。だって、一人ひとりが電話をしているのではなくて、マイクで、やっているわけですからね。

だから、やはり1つは何か東電はそういう、そこの理由は100%はわかりませんけれども、現場に来ている武黒さんに十分な情報を提供していなかったのではないでしょうか。それから、吉田さんというのは、勿論個人としての性格なりあれもあると思いますけれども、法律上は彼に権限があるんです。よく言うんですが、私の理解では、船で言えば艦長、飛行機で言えば機長のような役割です。法律上もそうなっています。

ですから、原発の炉に関しての危機に対しての対応は、最終的には現場の責任者。これで言うと、炉の責任者は所長ですね。実はそういう権限もあるんです。ですから、そういう意味では、そういう権限を持っていて、そういう知識を持っている所長が、それに基づいて話をしてくれた。

だから、私のいろんな理解で言えば、それがストレートに伝わってきた。そこに別の経営上の判断とか、何とか省の判断とかではなくて、まさに原子炉の状態とその危険性についてストレートに話を、少なくとも御本人が知っていることについては、それでやってくれたんだろうと思います。それが私にとっては非常にわかりやすかったということです。

【質問者】
今の言葉を、コミュニケーションができたできないという話であって、今のような話になってしまうけれども、多分、菅さんと吉田さんとの間の会って話をするという中身の大事さというのは、会って何回かやりとりをするだけで、頭の後ろ側にある価値の置き方とか、物の考え方が共有できている部分というのは、それこそ一週にお互いがある種わかり合った部分があって、それがとても大きな安心感のような、信頼感みたいなものをつくったのではないかという感じが脇で聞いているとするんですが、どうなのでしょうか。

【菅前総理】
でも、会ったのはそのとき初めてで、その後も半年ぐらい経ってから会っているだけで、そう何回も会っているわけではないですよ。今までまだ2回しか会っていないかな。そこの感想が私も当事者だから言いようがありませんが、私からすると、ごく普通なんですよ。聞いていることについて真正面から答えてくれる。だから、わからなかったら、わからない理由を言ってくれる。

これは私は判断できませんとか、これは情報が届いていませんとか。だから、先ほど言ったように、武黒さんとだったらそういうことにならなかった理由が、彼個人と私の相性にあったというよりも、多分彼のところには、今になって思うのは、彼も若干言っていますけれども、自分のポジションについてとまどったみたいなことを最近言われているのを読んでみると、結局、東電本店がきちんと現場の状況も含めて、私というか、経産大臣もいるその席に伝えるという任務をきちんと与えて、それに対するフォロ一体制をつくって送ったという体制がなかったのではないでしょうか。

だから、必ずしも個人とだけは言えません。組織としてそういう任務にふさわしい体制をつくらなかったんでしょうと、東電が。最初の最初は確かに大変なんですよ。起きてから2時間、3時間で、4、5時間ですからね。ですから、よく言われるのは、15日の撤退問題が起きるときも、武黒さんは全く知らないわけですよ。彼自身は。だから、そんなことを知らないということもこっちは勿論当時は知らないですけれどもね。そんなところですかね。

【質問者】
そもそも最初の法律上の建付は、東電がその事象が発生したときの報告は、もともとは原子力保安院に報告して、保安院から官邸に流れるということだったと思うんです。

【菅前総理】
保安院ということは、経産大臣でしょう。

【質問者】
はい。したがって、武黒さんも最初に呼ばれたときに、何で呼ばれたのかなと。本来はそういうことなのに、何で官邸から呼ばれたんだろうという疑問を持っておられるところもあるんですが、その中では、建付がこうなっているんだけれども、しかし、こういう危機状況なんだから直接こっちにやれとか、その辺りの整理みたいなものはなかったんですか。

【菅前総理】
私からすれば、整理するのであれば、普通は原子力安全・保安院がいるわけですから、責任者が。これはこういうことになっていますという説明があって、それについてどうしましようと。あるいはオフサイトセンターが本来はやるべきだけれども、機能しないから臨時的にどうしましようということが、もしあれなら、安全委員長でもいいし、あるいは経産大臣でもいいですが、あったとすれば、それはそれで相談したと思います。

ですから、こちらとしては、とにかく本部長ですね。これは法律的になってしまうわけですから、原災本部の本部長になって状況を開きたいというのは当然ですね。その間がどうなっているかというのを聞きたいと。そのときに、ここはあれになっていますから、大臣が聞いて後で報告しますということがあれば、それで、も1つのやり方だったと思いますよ。先ほども言うように、今回が私は通常の予定された状況だったとは私自身も思っていません。ただ、そういうことができてこないというか、できていない中では、経産大臣も来ていましたから、そこで説明をしてもらうというのは、私からすれば自然なことだったんです。

以下では、12日午後に起きた1号機の原子炉建屋の水素爆発の経緯を語っている。

【質問者】
では、先に進ませていただきます。1Fの視察から戻られたのが10時47分ということになってごぎいますけれども、その後は官邸の方で執務とかをされていまして、1号機についてはベントの状況の報告とかを書いていると思うんですが、その後、午後になりまして、15時36分に1号機の爆発という事象が起きるわけです。1号機の爆発のときには、公明党との党首会談の最中だったと聞いておりますけれども、総理が爆発の事象を認識されたのはどういうタイミングなり、どういうきっかけでわかったんですか。

【質問者】
これは全体ではないですか。3号機。

【菅前総理】
このときは野党全員がたしかそろっていました。

【質問者】
失礼しました。では、1号機の爆発を認識されたきっかけといいますか、状況といいますか、そこをお伺いできればと思います。

【菅前総理】
ですから、15時から与野党党首会談で全党首が集まられていました。その途中であったわけですが、その時点では、会談の途中には、私には情報が入っていません。何か一時期メモが入ったんではないかということを他の野党も言われましたが、それは関係のないというか、このことではないメモでして、この時点では入っていません。

その後に、テレビで報道があったんですね。それもいろんな段階があるようですが、全国放送で言うと日テレが報道したのが4時49分だったとだれか言っています。ですから、会議が終わった後に何か起きたということが伝わってくるわけですが、正式に東電なり、保安院からの報告は大分後になってからです。

【質問者】
テレビの報道の後で。

【菅前総理】
テレビの報道の後だったかな。テレビの報道も大分後なんですけれどもね。

【山崎局長】
何か白煙が上がっているという話はあったんですけれども、実際にテレビでその後に出ていたのを。

【菅前総理】
結局、私が直接見たのは、日テレが報道したときに見たわけです。ですから、それまでは白煙が上がっているとか、何かぽーんという爆発だったのかどうかというのもはっきりした形で上がってこなかったんです。テレビを見たら、明らかに爆発ですから、それをだからテレビで見たときに、はっきりと爆発だということを私自身も認識しました。

【質問者】
当然、一体何が起きたんだと。どういう原因なんだという話になるんだと思うんですけれども、水素爆発ではないかとかいう話がわかってきたのはいつごろの時点といいますか、何時ごろになってから。時間のことはまた細かな話かもしれませんけれども、大まかにで結構ですが、いつごろになってわかったかということはいかがでしょうか。

【菅前総理】
このときにちょうど班目さんと一緒にテレビを見ていたんです。あの爆発の仕方というのは、勿論それは原発本体が爆発すればもっとすごいことになっているでしょうけれども、水素爆発の可能性が高いわけですから、最初の段階で水素爆発のことがちょっと気になったものですから、班目さんには聞いていたわけです。そのときは、それはありませんと。彼は後で格納容器のことだけが頭にあったからという言い方もしていましたけれども、格納容器には窒素が入っているので、水素爆発なんでありませんということを言われていたので、そういうものかなと思っていたんですが、結果的には起きたわけです。

ですから、私としては、これは起きないと言っていたけれども、やはり水素爆発が起きたんだということを画像からはそう感じました。

【質問者】
そうしますと、それに対する対応になりますと、状況把握、原因把握と国民に対する公表をどうするかとか、その辺りになるわけでしょうか。

菅氏は引き続き、東電や原子力安全委員会の専門家への不信感をあらわにする。

【菅前総理】
ですから、同じことの繰り返しになるんですけれども、まず起きた事象についての説明がなかなか来ないんです。

それは現場自身が後で聞きますと、私はサイトの中にモニターのテレビぐらいあって当然だと思うんですけれども、それが何か福島テレビが撮ったのが唯一だとか、だから、サイトの中でさえドンという音は間こえたけれども、だれかが帰ってくるまではわからなかったとか、それがそういう形で本当に事前に来たのかわかりませんけれども、つまり、起きたことが1時間なり、1時間半後にテレビで放映されてさえ、その事態がどういう事態であったかという説明がないし、その説明がないということは、それに対してどういう対策があるかということも提案がないし、簡単に言えば何もないんですね。

私も、爆発が起きたということは、テレビを見てわかったけれども、当然、ほかのところでも起きないようにとかという一般的なことはわかりますが、それに対してどうするということを私が考えるということまではとてもいきませんから、まずは一体どういうことが起きたんだということを当然聞くんですが、何か方法があって、ではこれからどうするんだと。この辺りからです。これからどうするんだということが何も提案がないんです。

事態の説明も不十分。まして、これからの予測あ不十分です。ことの時点とは違いますけれども、割と早い段階からセカンドオピニオンということで、個人的には一部の人と電話で意見を聞いていました。勿論、現場の状況を知らない人ですから、一般的な話ですけれども、一般的な話としては、後で来るでしょうが、いろんな事象の話を開いていました。だけど、一番の私自身の足元の3つの組織から上がってくる話は、今、言ったような状況でした。

1号機の原子炉への注水の経緯。淡水が調達できず、海水を注入する議論の経緯について述べている。

【質問者】
そういう状況の中で、その後、1号機の対応について出てきた話というのが、例の注水についての話になるのかなと思うんですけれども、夕方ぐらいに注水についての話があるようですが、この話が起きてきたというか、注水の話になったいきさっというか、どんな経緯でその話になったのかというのは御記憶でしょうか。

【菅前総理】
それは、若干私も、そのときに初めて聞いたこと、あるいは考えたことか、後になってそうだったということが若干混同していますけれども、今の時点で一番注水が必要だったと思っています。やはり1号の注水が始まらなかったのは、水があるという認識なり、ICが動いていたという認識があったのではないでしょうか。

ですから、注水についてあのところの事象をいろいろ当時も言っていたんですが、簡単に言えば、何段階か報告が来ていますけれども、ある時期は水位が不明なんですが、ある時期は水位が改めてわかったときに、燃料棒より上にあるんです。上にあるという報告が何回か来ているんです。

だから、ICのことは、私も当時はそんなに細かいことまで聞いていなかったと思うんです。

IC:アイソレーションコンデンサー、非常用復水器。原子炉の圧力が上昇した場合、原子炉の蒸気を導いて水に戻し、炉内の圧力を下げるための装置。

水位は当時、リアルタイムで何回か聞いています。ですから、プロの皆さんからすれば、冷却ができなくなれば直接水を入れるしかないというのは、多分基本的な認識はあったと思うんです。常識だったと思うんです。ただそれが1号も2号も3号も結果として遅れているんです。それは、1号については、まだ水があるという認識。2号、3号はどうも動いていたようですけれども、冷却機能は動いている。さあ入れようかと思ったら、ドーンとあって、なかなか入らなかったということです。

ですから、水を入れるということについては、私がということではなくて、冷却機能が動かない中では、もうあとは水を入れるしかないというのは、その道の専門家からすれば、当然の認識だったんだと思います。ですから、どの時点でそういう話が出てきたかというのは、ちょっとその辺りは、いろいろ記録を見ていると、かなり早い段階から注水について現場は指摘しているんです。

記録によるとですよ。ただ、そんなところまで私にいちいち、その時点で勿論相談も来る筋合いのものではありませんから。ですから、どの時点でどういう議論があったというのは、必ずしも時点までは私も認識の中ではっきりしていません。

【質問者】
そうすると、関係するかもしれないと思うことは、17時45分に海江田大臣が海水注入の指示をしていまして、その報告なりのときに海水注入をしていいかどうかという議論になったのかなと思ったりするんですが、その辺のそういう経緯なのか、それともそうでもないのか、その辺はいかがでしょうか。

【菅前総理】
ですから、いわゆる海水注入の問題は、その前に淡水投入が行われているわけですよ。ですから、水を注入するということについては、たしか言ったのは、その更に前から本当はあってよかったんだと思います。それは私が今この時点で言うべきととかどうかはわかりませんが、だから、との記録を読むと、淡水注入が一応0時52分にまず1,000リットル入ったと書いてありますね。

ですから、淡水注入が何回かあって、それから海水注入の話になっていくんだと思います。海水注入については、淡水がなくなれば海水を入れるしかないという認識は全員一致していました。勿論、私もとにかく水を入れるととしかないわけですから、当然だと思っていましたし、経産大臣も17時55分に海水で満たすようにという命令書を出すという指示をしていますね。

【質問者】
特段、そうしますと、総理のお気持ちの中で、海水注入について仰か問題があり得るのではないかとか、危険があり得るのではないかという問題意識があったわけではないわけですね。

【菅前総理】
つまり、注水が最も重要だという認識は、ある段階から強く持っていましたから、だから、動かなくなりますよ。冷却機能が動かなくなれば、水がなくなれば当然注水しかないわけですから、そういう意味では、その淡水がなくなったら海水になるというのは当然だと思います。

同時に、海水のときに何が起きるかということは聞いていました。現場から聞いていたか、ほかの時点から聞いていたかは別として。つまり、海水をずっと長い問、注入し続けると、どんどん蒸発しますから、蒸発量に対して、御存じのように3%が塩分ですから、塩が固まってくると。

それが金属などに長期的にというか、影響するとかという専門家の指摘はありました。ですから、そういう意味での淡水があれば、淡水の方が、そういう塩分が析出しませんからいいわけですけれども、淡水がなくなったときは、緊急的に海水を入れるのは当然だと思います。

よく再臨界のことが言われるんですけれども、再臨界と海水の問題は考え方は全然別です。当時、再臨界のことで聞いていたのは、メルトダウンしたときに、メルトダウンしたものの形状によって再臨界が起きやすい形状と起きにくい形状があるわけです。

どてんと固まると起きやすいわけです。平たくなったり、ばらばらになっていると起きにくいわけです。そういうのがありますけれども、海水であるかないかということは、私の認識では別の話です。それで、そのときに聞いたのは、再臨界についてもその場で聞いたら、班目さんが、可能性はゼロではないと。これは国会でもそういうふうに自分で言ったと言われていますから、最近何か別のところではまた別のことを言われているようですけれども、それで、何回か確かめたというか、聞いている人もいますが、議事録が残っていますが、御本人も国会にもそういう答弁をされています。

ただ、私の中では、海水の問題と再臨界の問題は、あえて言えば、入れる水であっても、海水であっても、ホウ酸か何かを入れれば再臨界の可能性は止められるわけですから、そういう間接的なことはありますけれども、海水に変えたから変えなかったからということとは関係ありません。

海水を注入することで、原子炉内で再臨界を誘発するおそれがないかを巡って、東電と官邸の対応が混乱した様子が読み取れる。

【質問者】
皆さん関係者の方にもヒアリングをしているんですが、皆さんそれをつなげてしまっていて、海水を注入したら再臨界の可能性はないのか、危険ではないのかということで総理もお聞きになったというとと。

【菅前総理】
だから、それは多少技術のわかっている人は海水の話と関係ありません。水と海水で再臨界がしやすくなるなんでいうことは、私の知識の中では全くありません。あくまで。

【質問者】
むしろ形状といいますか。

【菅前総理】
それが形状なんです。もっと一般的に言えば、再臨界にならないようにするためにホウ酸を用意しているわけですから、それはメルトダウンした後の形状のことを今ちょっと言いましたけれども、例えば燃料棒の間に入っている制御棒が何かで壊れたり、何かで抜け落ちたりしたときは、また再臨界が起きますから、そのときに水の中にホウ酸が入っているかないかというのはものすごく重要ですから、中性子を吸収するわけですからね。

ですから、それは水と海水でそれに関して差があるかないかなんていうことは、私はそこまでは聞いたことはありません。ですから、全く別の話です。

再臨界が起きる場合にそれを防ぐためには、その後もたしかホウ酸を入れたはずですよ。海水を入れ始めてしばらくして、ホウ酸を入れているはずです。

【質問者】
再臨界の可能性があるかないかで、一旦議論が中断になって、総理入れが中断になって、1時間ぐらいしてからもう一度再開したという流れだと皆さんおっしゃっているんですが、余りそういう御認識でもないですか。

上記の「総理入れ」は誤植と考えられる。

【菅前総理】
ですから、何度も言いますように、武黒さんだったと思いますが、準備に時間がかかりますと。1時間半あるいは2時間かかりますということをいろんな人から聞いています。だから、1時間ないし2時聞は、どちらにしてもまだ準備ができていないから、水が入らないという説明があった。

その中でいろんな議論をしていたんです。その中の議論なんです。ですから、当然準備ができれば、海水を入れるというのも当然のこととして、その時間があるなら、例えばホウ酸を数回入れられるのか、とりあえずは樽水を入れておいた後に入れるのか、その必要はないのかということの判断をしてくれという趣旨だったんです。

だから、中断したというのは、どちらにしても、まだ始まるのに時間があるからということだったので、それまでの聞にということだったんです。だから、武黒さんは現地の状況を正確には伝えていなかったわけですね。ですから、後で気がついてみたら、中断がそんなに2時間かかるというよりも前にスタートしていたわけです。

【質問者】
武黒さんの説明だと、官邸での議論で海水注水の了承が得られていないので、ちょっと待ってくれないかということを吉田所長に連絡しているらしいのですが、そうすると、官邸での議論の認識についても武黒さんの説明は不正確ということになるわけですか。

【菅前総理】
私はよくわからないですよ。武黒さんというのはプロだと聞いていますから、何で海水注入と再臨界のことをごっちゃにしたのかということはよくわからないんです。被も原子力の専門家ですから。

【質問者】
済みません、途中で。何度も御説明でわかるようなところもあるのですが、班目委員長に潟水の問題と再臨界の可能性ということについて、言葉として、あるいはどんな流れの中でそういう話をされたんでしょうか。そこがちょっとわかりにくいんです。

【菅前総理】
それのためだけの会議を聞いているのではなくて、しょっちゅういろんな、先ほどのベントの話もそうですし、やっているわけですよ。 ですから、私の認識では、先ほども言いましたように、武黒氏の方から1時間半ないし2時間あるという前提の中で、だから、どこまで塩分の話も出たかどうか細かくはわかりませんが、先ほども言いましたように、塩分だって長い間やっていれば塩は固まるというか、析出しますから、そういう問題がどこまで議論になったか詳しくはわかりませんが、そういうことは現実にあります。

それから、ホウ酸を入れるかどうかという議論もあっても不思議ではありません。ホウ酸というのは再臨界を防ぐためですから。ですから、少なくとも班目さんも、武黒さんも、私よりはよほど原子力のプロですから、それが全然別のことだということはわかっているんではないですか。

【質問者】
周りは海水注入と再臨界の話を結びつけたみたいな形で動いているように見えるんですね。

【菅前総理】
ですから、私がわからないんですよ。そういうことに対して、私よりよっぽど原子力の専門家ですから。あくまで、水なりを入れるときに、簡単に言えば、再臨界の問題は、ホウ酸を入れるか入れないかという話なんです。一般的にホウ酸を用意しているんですから、だから、私が詳しいのではなくて、私はわからないから聞いたんです。

そういうことも考えなければいけないんですかと。私が聞いたんです。

【質問者】
総理の形状によって。

【菅前総理】
ちょっとごっちゃになりました。形状はメルトダウンの後の話で、もしかしたらごっちゃになったと思います。

【質問者】
ですよね。後の話ですから。

【菅前総理】
メルトダウンの後です。
【質問者】
今の海水のときには、まだその段階にはなっていないわけですね。

【菅前総理】
少なくともなっていないという認識です。

【質問者】
そういうメルトダウンの状況へという総理の当時の知見は。

【菅前総理】
それはちょっと前後しているかもしれません。

【質問者】
いつごろからお持ちになっていたんですか。

【菅前総理】
ですから、ちょっと前後しているかもしれません。これは12日ですからね。まだ直後ですから、その後、メルトダウンについてのいろいろな議論があったときに、いろんな人に聞きました。

【質問者】
今のことと絡むかどうか知りませんけれども、総理の御記憶で、東電が政府にお願いしたいことの中に、非常に純水というか、質の高い水が欲しいというリストがあったんだそうですが、これは何だということで、つまり、淡水をやって足りないのに、海水だという議論をするときに、そんなリストがあるのかということで、変だなと思われたことがおありなのか。

つまり、東電が、できれば海水はできるだけ延ばしたいという要請があったのかどうかですね。そういうことを感じられたことはありますか。もうしょうがないこれはということで、東電も動いていたのかと。

【菅前総理】
私はそのリストとか何とかというのは、今、そのままでは記憶は特にないです。ただ、たしかメガフロートで水を運ぶみたいな話はありました。ただ、それは一般的な話ですから。これは緊急時ですから、水がなくなれば海水しかない。その流れで言えば。

【質問者】
躊躇しているという印象は全然お持ちにならないですか。

【菅前総理】
その時点で私はわかりませんでしたけれども、少なくとも、私の自の前で感じていることは、そんなことで抵抗したというのは、私の目の前ではありませんでした。私には全くありませんでした。

(続く)

 


「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」(政府事故調)は、772人の関係者から聞き取りを実施した。政府は、聴取結果書(聴取録)を順次公開しており、2015年3月26日現在、236人分の聴取録が閲覧できる。

聴取録は、福島原発事故への理解を深めるうえで、なお第一級の資料であることから、当プロジェクトは、聴取録の読み解きを進めている。

読み解きにあたっては、国会事故調、政府事故調、民間事故調の各報告書を基礎資料とし、プロジェクトのテーマである「わかりやすい」を追求する。プロジェクトが聴取内容に挿入する、補足的な記述は太字で記載する。また、必要に応じて、文脈に影響しない範囲で、一部の記述を削除、難解な漢字をひらがなにするなど、最小限の編集を加えている。

Source: 内閣官房

(小島寛明)