【政府事故調聴取録を読む1-1】事故対応全般|当時の首相・菅直人氏(1) 

Investigation

 

東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会(政府事故調)は、772人の関係者から聞き取りを実施した。政府は、聴取結果書(聴取録)を順次公開しており、2015年3月26日現在、計236人分の聴取録が閲覧できる。

聴取録は、福島第一原発事故への理解を深めるうえで、なお第一級の資料であることから、当プロジェクトは、聴取録の読み解きを進めていく。

読み解きにあたっては、国会事故調、政府事故調、民間事故調の各報告書を基礎資料とし、プロジェクトのテーマである「わかりやすい」を追求する。プロジェクトが聴取内容に挿入する、補足的な記述は太字で記載する。また、必要に応じて、文脈に影響しないと判断できる範囲で、一部の記述を削除、難解な漢字をひらがなにするなど、最小限の編集を加えている。

聴取対象者:菅直人氏(事故当時の首相)
聴取日:2012年4月3日
聴取内容:事故対応全般について

【ポイント】


聴取の冒頭で、菅氏が持論を述べている。

私も事故当時、そして今日まで、いろいろな形で事故を私なりにも検証なり、いろいろ考えてまいりました。そういう中で、やはり第1の大きな私の認識は、特に今回の原子力事故、福島原発事故については、事故の起きた3月11日以前に、その大半の言わば原因があったというのが私の経験した中での認識であります。

ここで菅氏は、福島第一原発の立地の問題点について言及している。

余り事細かには申し上げませんが、象徴的に言えば、例えば福島原発第一サイトは、もともとは海から35mの崖、高台だったわけですが、それを海から10mのところまで土を切って、そして置いていると。当時の東電の記録を見ますと、水をくみ上げたりする上で便利だったということ、先見の明があったと、そこまで書いてありますが、しかし、歴史的に見れば、あの地域は50年や100年に一度は大きな津波が来ているところでありまして、そういうことについての考慮が当時全くなされていなかったのかと考えると、そういった点が象徴的にも言えると思っております。

また、原子力行政についても、時代時代によって変化はありますけれども、例えば原子
力安全・保安院というものは、どちらかと言えば原子力を推進している経産省の中にあったと。これもIAEAなどから指摘が以前から何度もありながら、そういう状態をそのままにしていたと。それがいろんな形で安全性を軽視することにつながったという事例は、これもいろいろな報道などを見ると、たくさんあったように思えてなりません。

原子力安全・保安院は、経済産業省資源エネルギー庁の「特別の機関」と位置づけられていたが、2012年9月、環境省の外局である原子力規制委員会に移行した。

また、直接的な3.11の時点におけるいろいろな法制度なり、直接の危機対応の準備でありますけれども、例えばこれも特徴的な点で言えば、オフサイトセンターというものを置いて、そこが基本的に指揮をとる。これは多分、東海村の臨界事故のときの教訓を踏まえて行われた法整備だったと思います。ただ、現実には、地震と原子力事故が同時に起きた中で、オフサイトセンターが全くと言っていいほど物理的にも人が集まるといったような性格が機能しなかった。そういった意味で、この法制やそういう制度的な準備も極めて不十分というよりは、今回の事故においては、対応ができていなかった。こういった問題を含めて、それらのことは、ほぼすべて3.11以前の備えが不十分であったと。簡単に言えば、全電源喪失を一切想定しない、否定した中で行われていたところに大きな理由があったと思っております。

福島県が2009年に策定した「福島県地域防災計画(震災対策編)」は、原子力災害対策特別措置法(原災法)10条に基づき、事故などの通報を受けた際には、福島県庁(福島市)に県災害対策本部を設置し、オフサイトセンター(大熊町)に原子力現地災害対策本部を設置するよう定めている。オフサイトセンターは福島第一原発から5キロ程度の地点にあり、ほとんど対策本部の機能を果たさなかった。

その上で、3.11からのことについては、また今日も本当にいろいろな御質問もあるかと思いますが、先ほど委員長からも言われましたように、やはりこのことが今後どのような形で日本の原子力行政を変えていくのか。今、原子力規制委員会(原子力規制機関に訂正)についてもいろいろ話は進んでおりますが、これについても後ほど私なりの見方も申し上げていきたいと思います。

原発輸出についての言及。

更には、もっと本質的に、エネルギー源としての原子力というものを我が国が今後どのように受け止め、どのように扱っていくのか。更には、国際的にも、このままいくと、福島原発事故があったにもかかわらず、新興国を含めて、かなり原発新設の動きが進んでおります。輸出入の問題も含めて、国際的に何らかのルールが必要ではないかと私は考えておりまして、今回の事故調査の中で、そういった広い観点についても何らかの示唆をいただければありがたいと、思っております。

委員長がおっしゃいました放出された放射能被害の問題。これは本当に深刻であると同時に、非常に難しい場面がたくさんありました。どちらかといえば、この部分は、当時、官房長官を中心に対応をしてもらっているものが多いんですけれども、今後長く残る問題として、この問題についてもしっかりした検証が私も必要だと思っております。

(続)

Source: 内閣官房

(小島寛明)