【東電の旧経営陣強制起訴へ】東京第五検察審査会が議決した事実関係

Judiciary

福島第一原発事故を巡り、検察当局が不起訴にした東京電力の旧経営陣3人について、東京第五検察審査会は起訴すべきだと議決した。3人は、業務上過失致死傷の罪で、強制的に起訴されることとなる。原発から約4.5キロ離れた双葉病院から避難の途中でした入院患者や、復旧作業中に水素爆発で負傷した作業員を被害者として、刑事裁判が争われる。

今回、被疑者とされた東電の旧経営陣は次の3人。

  • 勝俣恒久元会長
  • 武黒一郎元副社長
  • 武藤栄元副社長

検審の議決は、勝俣元会長ら3人は、巨大津波で原発の炉心損傷の恐れがあることを予見できたが、防止策を怠った過失があるとしている。

 

検察審査会が議決要旨に記載されている事実関係は以下の通り。一部の文言について、当プロジェクトが編集を加えた。


 

犯罪事実

被疑者勝俣恒久(被疑者勝俣)は,2002年10月から東京電力株式会社(東京電力)の代表取締役社長として,2008年7月からは東京電力の代表取締役会長として,同社の経営における最高責任者としての経営判断を通じて,被疑者武黒一郎(被疑者武黒)は,2005年6月から東京電力の常務取締役原子力・立地本部長として,2007年6月からは東京電力の代表取締役副社長原子力・立地本部長として,同社の原子力担当の責任者として原子力発電所に関する知識,情報を基に実質的経営判断を行うことを通じて,被疑者武藤栄(被疑者武藤)は,2005年6月から東京電力の執行役原子力・立地本部副本部長として,2008年6月からは東京電力の常務取締役原子力・立地本部副本部長として,2010年6月からは東京電力の取締役副社長原子力・立地本部長として,

同社の原子力担当の責任者として原子力発電所に関する知識,情報を基に技術的事項に関して実質的判断を行うことを通じて,いずれもその頃,福島第一原子力発電所(福島第一原発)の運転停止又は設備改善等による各種安全対策に関する実質的判断を行い,福島第一原発の地震,津波による原子力発電所の重大事故の発生を未然に防止する業務に従事していた者であるが,

福島第一原発は,昭和40年代に順次設置許可申請がなされて設置され,我が国では津波に対する余裕の最も少ない原子力発電所とされていたところ,文部科学省に設置された地震調査研究推進本部(推本)の地震調査委員会が2002年7月31日に公表した「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」(長期評価)において,三陸沖北部から房総沖の海溝寄りの領域内のどこでもMt(津波マグニチュード)8.2前後の津波地震が発生する可能性があるとされ,原子力安全委員会が2006年9月に改訂した耐震設計審査指針(新指針)では,津波について,施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性があると想定することが適切な津波によっても,施設の安全機能が重大な影響を受けるおそれがないことを十分に考慮したうえで設計されなければならないとされ,

原子力安全・保安院は,それを受け,各電力事業者に対し,既設の原子力発電所について新指針に照らした耐震バックチェックを指示し,そのバックチェックルールでは,津波の評価につき,既往の津波の発生状況,最新の知見等を考慮することとされ,他方,それまでの海外の事例や東京電力内で発生した浸水事故等により,想定津波水位を大きく超える巨大津波が発生して原子力発電所が浸水した場合には,非常用の電源設備や冷却設備等が機能喪失し,最悪の場合には炉心損傷等の重大事故が発生する可能性があることが既に明らかとなっていたところ,

2007年11月ころより,東京電力では,耐震バックチェックにおける津波評価につき,推本の長期評価の取扱いに関する検討を開始した結果,2008年3月ころには,推本の長期評価を用いると福島第一原発のO.P.(小名浜港工事基準面)+10メートルの敷地(「10m盤」という。)を大きく超える津波が襲来する可能性があることが判明し,それ以降,被疑者武藤においては少なくとも2008年6月にはその報告を受け,被疑者武黒においては少なくとも2009年5月ころまでにはその報告を受け,被疑者勝俣においては少なくとも2009年6月ころまでにはその報告を受けることにより,被疑者ら3名はいずれも,福島第一原発の10m盤を大きく超える津波が襲来する可能性があり,

それにより浸水して非常用の電源設備や冷却設備等が機能喪失となり,炉心損傷等の重大事故が発生する可能性があることを予見し得,したがって,被疑者武藤は少なくとも2008年6月以降,被疑者武黒は少なくとも2009年5月以降,被疑者勝俣は少なくとも2009年6月以降,福島第一原発の10m盤を大きく超える津波が襲来した場合に対する何らかの設備改善等の安全対策を講じることを検討し,何らかの合理的な安全対策を講じるまでの間,福島第一原発の運転を停止すること等も含めた措置を講じることにより,いつか発生する可能性のある大規模地震に起因する巨大津波によって福島第一原発が浸水し,炉心損傷等の重大事故が発生することを未然に防止すべき注意義務があるのにこれを怠り,必要な安全対策を講じることなく,運転を停止することもないまま漫然と福島第一原発の運転を継続した過失により,

2011年3月11日午後2時46分に発生した東北地方太平洋沖地震(以下「本件地震」という。)に伴い,本件地震に起因して生じた巨大津波による福島第一原発の浸水により,全電源喪失により非常用の電源設備や冷却設備等を機能喪失させ,炉心損傷等の重大事故を発生させ,同日以降に生じた水素ガス爆発等により福島第一原発から大量の放射性物資を排出させた結果,別紙被害者目録(省略,以下同様)の番号1ないし13の計13名につき,水素ガス爆発等により生じたがれきに接触するなどして同人らにそれぞれ同目録記載の傷害を負わせ,

福島第一原発から約4.5キロメートルに位置する福島県双葉郡大熊町大字熊字新町176番1所在の医療法人博文会双葉病院に入院していた患者のうち同目録の番号14ないし57の計44名につき,前記放射性物質の大量排出に起因して災害対策基本法に基づく避難指示により,長時間の搬送,待機等を伴う避難をさせ,その避難の過程において同目録記載の同人らの既往症をそれぞれ悪化させ,よって,同目録記載の日に同人らをそれぞれ同目録記載による死因により死亡させたものである。